雪虫
夕方、もう少しで日が暮れるという夕陽が黄昏るとき、
バス停に小学生の男子とお母さんらしきひとが待っていました。
「なんか飛んでる、これなに?」
と尋ねる子どもに、
お母さんはスマホに夢中で生返事。
また、別の小学生の男子ふたりもやってきて、手で捕まえました。
「これなに?」
と再び聞いた子どもに、
ようやく母らしきひとは
「雪虫」
と答えましたが、
すでにこと遅し。
雪虫は捕まえると死んでしまいます。
そうっと白い雪のような綿がからだにくっついたり、洋服やかばんにくっつかないようにしないと
死んでしまうのです。
あの白い綿から汁が出ると飛べなくなりそのまま動けなくなります。
子ども達は
「飛ばなくなった」
と言っていましたが、
飛ばなくなったのではなく、飛べなくなったんです。
わたしも雪虫の存在を知らない何十年も前、
近所のおばさんに
「今日は雪虫が飛んでるなあ、寒なるえ、寒なる前に飛ぶからなあ」
と聞いたことがあり、手を出すと雪虫が乗ったので、そうっと綿のような毛を撫でると簡単に綿が取れ、飛べなくなってしまいました。
人間はほんとにいらんことをします。
飛べなくなった原因はわたしの無知。
触れば死んでしまうことを知っていれば触らなかったのに。
知らなかったとはいえ、
儚い虫の命を奪ったことに変わりはありません。
あれから、昨日も今日もたくさんの雪虫が飛んでいたけれど、できるだけ雪虫に触れないようにゆっくりと歩きました。
美しい冬は間近です。
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