プティハッピーの花束

日々の中で取るに足りないような小さなしあわせに氣付くこと

カラス追悼


カラスがコーヒーショップの前に横たわっていた。


もう息絶えている様子。


こんなきれいなままのカラスが横たわっているのを、見たことがない。


いつも木や建物に止まっているか、飛んでいたり、チョンチョンと場所移動しているので、きれいに横たわった姿を初めて見た。


ときどき杜の枯れ葉に隠れるように横たわるカラスの髑髏を見ることがあっても、あんなにきれいな丸ごとの姿を見たことがない。


羽の部分は濡れたように艶があり、漆黒が深い。


おなかの辺りは柔らかい黒。


足も眼も顔も黒い。


黒だけのグラデーションでできたカラスは美しかった。


亡くなるとき、動物たちはひっそりとひと目を避けて死を迎えるから、なにかのハプニングが起きたのだろう。


からだに破損がないから、車に轢かれたわけでも、誰かに仕留められたわけでもなさそう。


杜や川沿いではカラスに毎日会っている。


カーカー


なんて啼くカラスの方が少なく、わたしが引っ越してきた22年くらい前は



カー、カッカッカッ


と水戸黄門さまが笑うときみたいな啼き方をするカラスがいて、


彼には


ご隠居( ꈍᴗꈍ)


と名付けて、ご隠居を見かけると、


「おはようございます、今日も冷えますなあ〜」


と、とにかく満面の笑顔で話しかけた。


3年ばかり、よくうちの近くで


カーカッカッカッ


ご機嫌よろしゅうに話しておられたが、


娘が小学校に行き出した夏から


あの豪快な啼き声が聞こえなくなった。


それから、酒焼けしたような嗄れ声で啼く、首の膨らんだ違う種類のカラスも赤いポストによく止まっていて、


軽く話をした。


「やっと雨上がったね」


とか、一言二言。


近所のひとが通ったら、


やっぱりあの人おかしいと奇異な目で見られるかもしれないが、


別にお構いなしで話してきた。


その酒焼け喉デカカラスには、


ジャニス・ジョップリン

と勝手に名前を付けていた。


🎤🍺

Summer time

なんて唄ってほしかったな。


彼か彼女かも、やはり3年くらいで見かけなくなった。


カラスはただ黒いだけで、

ゴミあさりはしても、生きるため、特別に悪い存在ではない。


赤い花がプランターに付くと引っこ抜かれて花が落ちていたし、


トマトを自転車籠に入れたまま玄関で荷物を降ろしているとトマトを攫われたりしたから、

氣をつけてはいる。


もう赤い花は植えなくなったし、野菜や食料品はまずはじめに家に入れるようにした。


また、農家の野菜をめちゃくちゃにしたりするし、嫌がられたりするかもしれない。


そんなカラス、

近くにある社では神さまの御使い

八咫烏と言われ、社の杜がねぐらになっている。


なので、杜に行くときはそこに住むカラスや猫と仲良くしたいと思う。


わたしの方が新参者で、杜にいる時間も圧倒的に少ないから、


土足で踏み込むようなことはしたくない。


🌳🌲🌳🌲🌳🌲🌳🌲


カラスの遺體を抱えて杜の土に埋め、還したい


と思ったが、

鳥特有の感染病であるかもしれず、素人判断で感傷的に動くのはよくないと、


まず、動物園に連絡したら


「処理ですか?」


と動物の遺体を扱う環境さんの連絡先を教えてくださった。


動物園の電話を取った方の


処理 


という言葉がキツかった。


確かに動かし運ぶのだから、そうなのだけれど、


生き物が、今まさに亡くなったのに。


胸が萎んだ。


教えてもらったところに電話をすると、


女性の職員さんが、


「ケアさせてもらいますね」


と言ってくださり、カラスが報われたようなきもちになり、救われた。


言葉が持つ正反対の性質、カラスは焼かれる身であっても、大事にされますように。


スムーズに光に帰れますように✨💐✨✨✨✨✨