プティハッピーの花束

日々の中で取るに足りないような小さなしあわせに氣付くこと

冷蔵庫の中


毎日、夢を見る。


娘の夢。


夢に出てくる娘は柔らかい笑顔で、わたしに話かけ、


掃除機を掛けたりしている。


いつもわたしが掃除機を掛ける。


そのまま、子ども達は巣立って行った。


食事も洗濯も、家事は一切合切、わたしひとりがやってきた。


数年家族だったひとは、掃除機だけは掛けてくれた。


末娘までが家から出てしまい、

もう誰かのために食事の買い物をしたり、


料理をすることもなくなった。


そんなわたしを氣遣ってか、次男だけはよくやってくる。


一番甘えたで、最後までここにいた娘は


出ていく一年前からわたしに話をしなくなったが、


それでも自宅にいたのに、


遂に巣立って行った。



これで毎日の洗濯や料理をしなくてもよいし、


掃除機を毎日掛ける必要もなったという


安堵より、遥かに大きく、胸にぽっかり穴が空いて


わたし、なんのために生きているんだろう?


もうわたし、必要ない?


まで行きそうになったが、


まだわたしの手を必要とする

犬がいた。


亀もいた。


だから、生き甲斐というより、


守ってあげなければ


とまた、生きる理由が見つかった。


そんなぽっかり穴の空いた胸を埋めるように、


毎日、娘の夢を見るようになった。


あまりにリアルで、


夢の中で、わたしは


✨これ、夢でしょ✨


と確かめるけれど、夢の中で、

わたしは夢の現実を生きているので、


✨いや、現実よ✨


と、答えをもらうのだけど、


朝、目が覚めると


娘はいなくて、


🌿そうだよな


とガックリしながら、


朝の空に、犬を連れて飛び込んでいく。


そうするとまた、秋の木々があまりに綺麗で、


川の流れる音が心地よく、

水鳥が愛らしく、見惚れていると、

朝日が登ってくる。


元氣な犬にぐいぐい引っ張られながら、


今日がまたひとつ始まっていく。


帰って冷蔵庫を開けると、


前は庫内にびっしり、工夫しながら入れた食材が、今はすかすかになっている。


子ども達はカフェオーレやココアを飲むから、牛乳を入れていたが、


わたしは豆乳しか飲まないから、


まず、乳製品が消えた。


子ども達に、ドリアやグラタン、トーストに使うため、チーズは必ずあったが、


わたしはチーズをひとりなら食べないので、それもなくなった。


お菓子を焼く必要がなくなり、

バターも買わなくなった。


肉は買わない。


わたしは子ども達の料理のためだけに、

肉を焼いたり煮たりした。


今、冷蔵庫にあるのは

野菜が数種類、


梅干し、豆腐、納豆


そんなもので、


犬と食べる魚がたまに入っているくらい。


小さく感じた冷蔵庫を大きく感じるようになった。


何日もダラダラと、家事をしながら、


時間を掛け、ゆっくり自分を取り戻しているようだった。


やっと、


ここへなにしに来たんだろう?


という第一スタンスに帰ることができた。


〜天命をまっとうする


まだ、やり残していることあったな。


それに、ひとつひとつ取り組める時間をもらっていることに氣付いた。


✨✨✨✨✨


ガラガラ……。


さっき、玄関が開き、娘が荷物を取りに帰ってきた。


こちらが、いくら話してもやはり返事はなく、すぐに、出て行ったのだけれど、


暗がりの玄関で、

元氣そうな姿を見たとき、


少し安心した。


娘恋しは永遠だろうけれど、


べそべそせずに、


自分の課題をまっとうしよう。


さっ!


明日のために寝ます。


おやすみなさい。