プティハッピーの花束

日々の中で取るに足りないような小さなしあわせに氣付くこと

灯油ストーブの音

この頃はあまり音楽をかけることはない。


あまりに動けないときは音楽に

からだを動かしてもらうのだけど。


家にいると し〜ん

としている。


窓に近づくと

ポタッ、パタバタッ、ポチッ、ポンッ、ポツタッ……。


屋根から地面に落下してゆく雨の音が聴こえる。


部屋の真ん中でこうして椅子に座っていると、


灯油ストーブの火が燃える音、

右上の壁に掛かる時計の音、

左側で寝ているビーグルの吐息がする。


今、全体の色はセピア、少しオレンジがかった柔らかい暖炉の色に包まれている。


犬以外、誰もいない。


温かい。


室温が暖かいのもあるけれど、この時間の丸みがなんともリキュールのように染み渡る。


リキュールは飲んでいない。


素面だけど、染み渡る甘い✨丸い時間。


灯油ストーブの音、時計の針の音、犬の寝息


これで充分、満ち足りている。


何にもいらないから、音楽はかけない。


丸い暖炉の色の空氣に包まれた極上の時間。



わたしが息を引き取るとき、どんな音が聴こえて来るのだろう。


子ども達がいたら、堪らないな。


旅立ちのときには、灯油ストーブの静かに燃える音だけに包まれていたい。


子ども達がいたら愛し過ぎて、まだいたくなって静かに逝けないな。


ああ、優しいこの時間……。


灯油ストーブの静かに燃える音が堪らなくいい。