商店街の時計屋さん
2年くらい前にあるひとが腕時計をはめてくれた。
落ち着いたグリーンのその時計はシンプルでとても氣に入り、すぐにわたしに溶け込んだ。
ところが、すぐに時間が遅れるようになり、遂には止まってしまった。
仕事帰りにショッピングモールの時計屋さんに持って行ったが、電池を変えてくれただけで、変えたすぐ尻からまた止まってしまった。
次の日にまた、その時計屋さんに行き、すぐ止まったことを伝えると、
「この時計は壊れています、電池代はお返しします」
と言われて、がっくり帰ったが、いただき物の時計は氣に入っていたから、諦めきれずにダメもとで、商店街の時計屋さんに持っていった。
時計屋さんは僅か5分足らずで直してくれて、電池を入れてくれた。
水分がガラスの中に入っていて、針が引っかかるようなことを言っておられた。
それからスムーズに動き続けてくれた時計がまた先月に止まってしまった。
迷わずあの商店街の時計屋さんに行き、電池を交換してもらった。
今は正確に時を刻んでいる。
🌳
ショッピングモールの時計屋さんと商店街の時計屋さんの違いは
壊れていると言って終わるか、すぐに直せたかの違い。
時計を受け取るときの温かさが明らかに違うように感じた。
商店街の時計屋さんは、わたしが2年くらい前に時計を持ってきたことを覚えていた。
「ちょうど電池使い切った、交換の時期ですよ」
とやはり5分で変えてくれた。
長年時計屋さんをやっている主は、紳士的で終始柔らかい笑顔で今日は中から奥様も出てこられた。
ただ時計を売るだけでない、職人肌、時計を我が子のように扱うひとだった。
2年前とおなじようになんか安心したきもちになって、活き活き動いている時計をはめて帰宅した。
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